引退後もファンに愛され続けたディープインパクト、放牧中はクロフネと仲良しだった

大の競馬ファンだった私は、時間が出来た時に北海道勇払郡安平町早来にある「社台スタリオンステーション」に繋養種牡馬の見学に行っていました。
多くの名馬の引退後の様子を見て来ましたが、非常に印象に残っているのが「ディープインパクト」です。
現役時代も引退後も多くのファンに愛された名馬でした。

2012年の一般展示の放牧中に見た驚きの光景と、ディープインパクトと仲が良かったであろうクロフネの様子を紹介します。

ディープインパクト

一般展示が開始する前から見学エリアでスタンバイ。
名馬たちが続々とゆったりと放牧地に姿を現す中、ディープインパクトは実に軽やかな感じで登場。
放牧地に入ると、少し歩き回った後に牧草をモグモグと食べ始めました。

一般展示で同時に放牧される種牡馬は6頭いましたが、ディープインパクトは他馬と比べると明らかに小さい。
見学エリアは、名馬たちが放牧されるスペースと結構離れていますが、馬体の小ささは一目瞭然。

牧草を食べながら時折首をあげて遠くを眺める姿は、三冠馬の風格も感じつつ、何か愛嬌がある姿でした。

他の名馬たちの様子もゆっくり見学し、1時間ほど穏やかな時間が流れていた時に、大型の観光バスが到着しました。
多くの観光客が一斉にゾロゾロと見学エリアへ来ました。
結構大きな話し声だったので、あまり競馬のことを知らないことはすぐに分かりました。
「あ~、あれがディープインパクトって馬かぁ~」
などなど、とりあえずディープインパクトの名前は知っていたようです。

「馬が驚かないように少し静かにしてくれないか…。」
と内心思っていた時でした。
大勢の見学客を前に、ディープインパクトが放牧地の中で威勢よく駆け出しました。

驚きの光景でした。
人々の騒々しさにイライラしている感じではなく、颯爽と軽やかに走っていたんです。

観光客が他の馬たちの方へ散り散りに向かうと、ディープインパクトは走るのをピタッと止め、またゆっくりと牧草を食べ始めました。

しばらくすると、またディープインパクトの見学エリアに人だかりが出来ました。
すると、またディープインパクトは颯爽と走り出したんです!

2度目にディープインパクトが大勢を前に走り出した時に確信しました。
「ディープインパクトのファンサービス!」
「賢いなぁ~、さすが名馬中の名馬!」
と感動しました。

引退後も多くのファンに愛され続けたディープインパクトでしたが、
「ファンのことも愛してくれた」
そんな風にも思えました。

観光客がバスで去ってからは、ディープインパクトは静かに牧草を食べながら穏やかな時間を過ごしていました。
時折、奥の放牧地の馬に近付いて何やらコンタクトをとっていたようでしたが、お相手は「クロフネ」でした。

ディープインパクトの現役時代の思い出

ディープインパクトが活躍した頃は、仕事が多忙になり競馬のレースは中継でなかなか見れなかった時でした。
新馬戦は見なかったものの「いい走りをしたら出世する」と言われていた阪神芝2000mでデビュー。
走破時計「2分3秒台」は未来の名馬と言われていた時代。
更に驚いたのが上がり3ハロンの時計でした。
「まじか!?」と次走から録画したり、何とか時間とったりしてディープインパクトのレースを見ることにしました。

翌年の初戦「若駒ステークス」で驚愕の走りを見たのでした。
若駒S(JRA公式チャンネル)

まるで空を飛んでいるような走りに惚れ惚れしたのと同時に、「いよいよナリタブライアン以来の三冠馬が見れるか!?」とワクワクしました。

続く、弥生賞、皐月賞は着差はそれほどなかったものの完勝の内容。
日本ダービーは大外を回って圧勝。
「無事に秋を迎えてね!」と願いました。

秋初戦の神戸新聞杯も完勝。
迎えた3冠目の菊花賞では、道中折り合うのに苦労しながらも、最後の4コーナーを回った時点で勝利が見えたファンも多かったでしょう。
史上2頭目の「無敗の三冠馬」の誕生。沸き上がる声援に包まれた淀のターフでした。

多くの人が勝利を疑わなかった三冠達成後の有馬記念。
4コーナーを回る頃時にはいつもの勝ちパターンで直線に向かうも、ハーツクライに届かず2着。
よもやの敗戦に中山競馬場は異様な雰囲気になったのは有名な逸話。私も同じく…。

「翌年大丈夫かな…!?」と、少しナリタブライアンのことが頭をよぎったものの、余計な心配でした。
阪神大賞典、天皇賞・春、宝塚記念と危なげなく勝ち続けました。

秋の凱旋門賞への挑戦は「今度こそ勝てる!」と多くの競馬ファンも期待を寄せたはず。
私も深夜興奮しながらレースを待ちわびていました。
いつもとは違う前目のポジションでレースを運び、道中でうまく外に出して最後の直線では手応え十分。
「勝った!」と叫びつつ立ち上がり応援するも、いい脚で上がって来る馬が…!?
最後まで並んでいた馬に離され、更に1頭に交わされ3着。(結果:失格であったのは置いておいて…。)
茫然とするも「これが世界か…」と思ったものです。

「これで引退だろうか…?」とも思いましたが、「やっぱり日本でもう1レース見たいな」という願いは叶いました!
というか、2戦も見れるとは思いませんでした。
ジャパンカップは直線で大外通って飛んで来ました。完勝。

そして、ラストランの有馬記念。
ディープインパクトの集大成とも思えたレースでした。
毎回4コーナーでスーッと上がって来るディープインパクトのレース運びにしびれていましたが、このレースは感極まりました。中山競馬場も大声援。既に「ありがとう!」って感じ。
直線で一気に突き放し、最後は手綱を抑えてフィニッシュ。
見事な「有終の美」でした。

ディープインパクトの引退後も数多くの名馬が誕生しましたが、私の中では別格です。

クロフネ

6頭の内でも一際ゆったりと放牧地に姿を現したのはクロフネでした。
ディープインパクトとは対照的に、遠目から見てもクロフネは大きな馬体。
手前のディープインパクトが小さかったので余計に大きく見えたのもあるでしょうが、それでも他の名馬よりも大きかったです。

他の馬たちが程なくして牧草を食べ続けている中、クロフネは少し牧草を食べては、首をあげて色んな所をゆっくりと眺める回数が多い。
何かとてもおっとりとした雰囲気が可愛らしい馬でした。
写真は、クロフネが色んな所を見ている最中、こちらをじっと眺めていた時の一枚です。
結構な時間見つめ合いました:笑(見学エリアからはかなり離れていたんですけど。)

穏やかでマイペースなクロフネ。
大きな体で寝転んで砂遊びをしたり、時折近寄って来るディープインパクトに向かっては、
「ん~、どうした~?よしよし」
という感じで相手をしてあげたり。

現役時代の走りも、一完歩が大きかったせいもあってか、マイペースで走っているような印象の競走馬でしたね。

クロフネは、終始色々な表情や姿を見せてくれたのでクロフネを見学した時間が一番長かったです。
愛嬌たっぷりだったクロフネの姿も忘れていません。

クロフネの現役時代の思い出

「雄大な馬体で古馬のような風格」と前評判が高かく、新馬戦は敗れたものの2連勝。

そして、当時は翌年のクラシックレースの登竜門とも言われたラジオたんぱ賞3歳Sに出走。
翌年の皐月賞馬アグネスタキオンとダービー馬ジャングルポケットとの3強争いの様相。
その中で、クロフネは単勝1倍台の1番人気。
私は3戦の上がり時計に疑問を感じ、「勝つのはアグネスタキオン」だろうと思いましたが案の定。

翌年の初戦で楽勝し、走破タイムも超優秀。
迎えた初GⅠNHKマイルカップでは、直線に入っても「ちょっと無理そうだな~」と思うも、ゴール手前で差し切り優勝。
「何かゆっくり走っている感じなのに届いてしまうのか!?」と驚いたものです。
翌週の競馬雑誌にゴール手前で先頭馬と並んだ時の一完歩の違いに更に驚愕しました。
「東京競馬場が合うのかもな」と思いました。

ただ、GⅠ優勝後でもどうも強さへの疑問符が拭い切れませんでした。
次の日本ダービーでは、「2400mの距離はどうだろう?」という疑問もありましたが、それよりも何よりも「東京大好きトニービン産駒のジャングルポケットが勝つだろうな」と。
やはりジャングルポケットが勝ったわけでしたが、それにしてもアッサリ抜かれる姿を見て、2400mのせいか重馬場に脚をとられたのか謎が一杯でした。

秋初戦の神戸新聞杯でも負けはしたものの、秋の天皇賞には期待を持ちました。
「東京競馬場で2000mならいい勝負できるんじゃないか?」と。
ところが、外国産馬枠と賞金の関係で除外…。
クロフネの代わりにアグネスデジタルが出走することになり、「え~~、いや勝負にならないでしょ、きっと…。」と愕然としたものです。
が、何とそのアグネスデジタルが勝った天皇賞・秋でした。

除外されたクロフネは、何と天皇賞(秋)前日のダートレースの武蔵野ステークスに出走。
芝とダートで活躍するGⅠ級の馬がほとんどいなかった当時は、大いに疑問を抱きつつのんびりレース観戦。
そこで驚愕の走りを見たのでした。
ある意味一番印象に残っているレースです。
武蔵野S(JRA公式チャンネル)

武蔵野ステークスのレースを見て、もう強さを疑うことがなくなりました。
迎えたジャパンカップダート(GⅠ)も大楽勝。

翌年の活躍、特にドバイワールドカップへの期待が膨らみました。

しかし、年末に屈腱炎発症で引退の報道に愕然…。
強さを確信した所での急な出来事だったので尚更残念でなりませんでした。

翌年のクロフネの走りを見たかったファンは多かったはず。

おまけ(可愛い仔馬)

社台スタリオンステーションの繋養種牡馬の放牧地があるところに、別の大きな放牧地があります。
春に見学に行くと、可愛い仔馬たちの姿も見られます。

金網越しに仔馬たちが近付いて来ることがあって、とっても可愛いです!
つい顔を撫でたくなるのですが「ダメダメ!」と自制。
「君は~…いくらなんだろう…:苦笑」
自分の指がどうのってことよりも、「仔馬に万一怪我させたら…怖」なんて。

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